災害時透析の情報伝達方法

災害により透析ができなくなった施設の患者は、できるだけ近隣で、透析可能な施設に透析をお願いすることになりますが、大規模な災害では地区を越えて患者移送することもあるかもしれません。透析施設の被災状況についての情報を集約し、支援透析を代替施設に要請したり、患者割り振りの調整をしたりするのは、被災地区の透析基幹病院を中心に連携して行います。(透析基幹病院の役割を参照)
地区の透析基幹病院は、北信:長野赤十字病院、東信:佐久総合病院、中信:相澤病院、諏訪・岡谷地区:諏訪赤十字病院、南信:輝山会記念病院、です。なお、相澤病院は、中信地区の地区透析基幹病院とともに、長野県全体の県透析基幹病院を兼ねます。(注1)

情報伝達の手順を以下に示しますが、まずは、被災施設がその状況を発信することが重要です。被災施設は、できるだけ早く情報の発信(地区透析基幹病院への電話連絡と日本透析医会災害時情報ネットワークへの書き込みの2つ)をするようにおねがいします。そこから支援をどうするか、本格的な検討が始まります。
また、被災を免れた施設は積極的に、被災施設がないか災害時情報ネットワークをみて確認しつつ、自施設の状況を書き込みするようにお願いします。被災していないという情報を発信することも、とても大切です。支援透析では、できるだけ多くの患者を受け入れていただきますよう各施設の協力をお願いします。

情報伝達の手順

  1. 災害がおこったとき、各透析施設は被害状況を確認し、透析実施の可否を判断します。透析中に災害が発生し、倒壊や火事などで緊急離脱が必要な状況では、避難を優先します。
  2. 被災して透析が出来なくなった施設(被災施設)は自施設が所属する地区の透析基幹病院に電話で直接報告してください。
    ②-1 地区基幹病院は、自地区の被災状況について情報収集を開始してください。また、被災施設があることを県透析基幹病院である相澤病院にも直接電話で連絡して下さい。
    ②-2 相澤病院は、各透析施設が、被災状況を災害時情報ネットワークへの書き込みをするように、ホームページにメッセージを出してください。
    ②-3 情報の伝達手段は、電話やインターネットが主になりますが、災害時には混乱して、つながらなくなる心配があります。災害が発生しているのに、被災状況の報告がない自地区の施設には、基幹病院からさまざまな手段で問い合わせし、積極的に情報を集めるようにしてください。
  3. 被災施設は、他施設に透析を依頼したい患者数や被災状況などを、日本透析医会災害時情報ネットワークに、できるだけ早く書き込みをしてください。
    ③-1 自施設の透析患者と連絡をとって安否や避難場所を確認し、透析は他施設で行うことになるので、連絡を待つようにお知らせしてください。(注2)
  4. 被災を免れた施設においては他施設から受け入れ可能な透析患者数を、日本透析医会災害時情報ネットワークに、できるだけ早く書き込みしてください。できるだけ多くの患者受け入れを表明していただけると助かります。
  5. 被災地区の透析基幹病院は、集められた情報を基に、被災施設から透析可能な施設(代替施設)への患者割り振りをおこなってください。被害状況によって自地区で対応できないときは、他地区の透析基幹病院に支援を要請し、他地区の透析施設とも連絡を取り、相談しながら代替施設の決定と患者割り振りの調整をしてください。別途の情報集計用紙も適宜ご利用ください。
  6. 被災地区の透析基幹病院は、各透析施設に、決定した患者割り振りを連絡し、支援透析を正式に要請します。
    ⑥-1 連絡するのは被災施設や代替施設だけでなく、受け入れを表明していただいたが患者割り振りされなかった施設にも、その旨を報告してください。
    ⑥-2 被災状況の集計結果や、決定された代替施設と患者割り振りの情報は県基幹病院(相澤病院)にも報告してください。
  7. 被災施設は、代替施設と連絡を取り合います。患者情報を提供し、移動手段(注3)や透析を行う時間帯など具体的な相談をします。
    ⑦-1 被災施設は、透析スタッフを代替施設に派遣し、患者情報や透析条件を直接伝えたり、透析実施を手伝ったりするようにお願いします。
  8. 被災施設は、決定された代替施設を、自施設の患者に連絡します。
  9. 県透析基幹病院(相澤病院)は、各地区の被災情報をまとめ、長野県災害医療本部に上申します。また、県透析基幹病院(相澤病院)は、長野県災害医療本部から特別な指示や情報があれば、それを各透析施設に伝達してください。
(注1)
もし、地区の透析基幹病院が被災して基幹病院の任務を果たせないときは、県透析基幹病院である相澤病院がその任務を代行します。また、相澤病院が被災したときは、長野赤十字病院が県透析基幹病院と中信地区の基幹病院の任務を代行します。
(注2)
長野県透析医会より各透析施設を通じ、透析患者には災害緊急時透析情報カードが配布されています。このカードには自宅近くの避難場所を記載してあります。各施設においては、このカードに記載された透析患者の住所や連絡先、避難場所を把握しておいてください。安否確認と透析可否の情報を連絡するための情報となります。一方、患者にとっては自分が透析患者であることを避難場所などでアピールできるツールにもなると思います。しかし、このカードには透析施設の名前や特記事項(薬のアレルギー)など最小限の情報しか記載してありません。刻々と変わる透析条件までは、リアルタイムに更新していくことは困難だからです。さらに混乱した災害時にこのカードを持参して活用されるのかも疑問です。ですから、もし自施設が被災し、他施設に透析を依頼するとき、被災した施設は、透析スタッフを透析受け入れ施設に派遣し、透析条件を直接伝えたり、透析実施を手伝ったりするようにお願いします。自分のことを知っているスタッフがいれば、なじみのない透析室で透析を受ける患者の不安が和らぐと思います。
(注3)
災害時の患者搬送体制を、平時から確立しておくことはかなり難しいです。透析施設までの交通手段は、まずは患者自身や家族、あるいは近所の方の力に頼ることになると思います。緊急時や自力での移動が困難な場合は行政や公共手段を頼りに、救急車やヘリコプターによる移送や、遠隔地への移動ではバスも想定されます。長野県災害医療本部と相談しながら、臨機応変に対応することになると考えています。

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